時効、請負など大幅見直し
民法の債権に関する規定がこのほど大幅に改正され、4月1日から施行された。この改正では、建設会社に関係の深い「請負」のほか、「時効」「法定利率」「保証」「債権譲渡」「定型約款」「相殺」等について見直しが図られた。ここでは、一般社団法人日本建設業連合会によるパンフレット「建設会社から見た民法改正のポイント」から各項目の要点を紹介する。
◎時効
▽工事代金などの債権の原則的な消滅時効期間が、「権利を行使することができる時」(客観的起算点)から10年、「権利を行使することができることを知った時」(主観的起算点)から5年に統一された。
▽労災などによる被害者が特別に厚く保護されている。
▽工事代金や補修請求などの債権に関し、「協議を行う旨の合意」を書面やメール等ですることで最長1年間(合意を繰り返すことで最長5年間)時効の完成が猶予される制度が新設された。
◎請負
▽「瑕疵」から「契約不適合」に用語変更。
▽契約不適合があった場合の権利行使として、代金減額請求、契約解除が新たに認められた。
▽建物その他の土地の工作物に関する瑕疵担保責任の存続期間の特別規定が廃止された。
◎債権譲渡
▽譲渡制限特約の付された工事代金などの債権を注文者(債務者)の同意なく譲渡した場合、旧法では、その譲渡は無効となる場合があったが、改正法では、特約に反する譲渡も有効になった(預貯金債権は除く)。
▽将来債権の譲渡が可能であることが明文化された。将来債権の譲渡について、現に発生している債権の譲渡と同様の方法(譲渡人の通知、債務者の承諾)によって対抗要件を具備することができる旨も明文化された。
◎相殺
▽債権者が債権を譲渡した場合でも、その債権の債務者が債権譲渡の対抗要件具備前に債権者に対して債権を取得した場合は、債権者は相殺が可能となった。
▽第三者が債権者の債権を差し押さえた場合、その債権の債務者が差し押さえ前に債権者に対して債権を取得した場合は、債務者が相殺できることが明確になった。
◎保証
▽法人以外の個人が根保証人になる場合の個人根保証契約について規制が拡充され、極度額の定めのない個人根保証契約は無効となる。
▽個人保証人に対する公証人による意思確認手続(公正証書の作成)が新設された。
▽保証人保護の観点から、保証人に対する情報提供義務が新設された。
▽連帯保証人に対する履行の請求は、主債務者に対しては効力が生じないこととなる。
◎法定利率
▽年5%から年3%に引き下げられた。また、法定利率が3年毎に1%刻みで見直される変動制になった。
▽商事法定利率(年6%)が廃止された。
▽工事代金の支払の遅延に伴う遅延損害金も、特約がない限り法定利率により算出される。
▽法定利率の変更に伴い、労働災害などの被害者の損害賠償額算定にあたって控除される中間利息の額が減るため、損害賠償額がこれまでより高額になる場合がある。
◎定型約款
▽「定型約款」に関する制度が新設され、定型約款の定義、定型約款が契約内容とみなされるための要件(組入要件)、定型約款内容の開示義務、不当条項の規則、定型約款を変更するための要件が、新たに規定された。
▽改正法が定める「定型約款」の定義に当てはまるもののみが適用対象となる。
(パンフレット「建設会社から見た民法改正のポイント」から一部を抜粋・要約)