老朽化不動産再生ビジネス

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「リファイニング建築」で築47年の賃貸マンション再生
三井不動産グループ


本紙令和5年11月号にて、三井不動産による賃貸マンションに「リファイニング建築」を施す「インスタイルレジデンス本駒込」(文京区本駒込)の工事現場見学会の模様を紹介したが、このほど工事が完了し、さる3月14日にプレス向け竣工現場見学会が行われた。

1976年竣工の同賃貸マンションは、築47年という長い月日の中で老朽化、また旧耐震基準で建築しているため耐震性にも問題を抱えていた。一般的には建て替えを行うこととなるが、ご承知の通り、昨今は材料費・人材費の高騰で建築費は大幅にアップしており、また第一種住居地域に立地しているため高さ制限があり、建て替えた場合には現状の7階建てを3~4階建てにしなくてはならず、賃貸マンション経営という観点からも厳しい状況だった。

こうした中で採用されたのが、三井不動産グループが手掛ける「リファイニング建築」を軸にした「老朽化不動産再生コンサルティングサービス」であった。

「リファイニング建築」とは、青木茂建築工房による独自の再生手法で、既存駆体以外はすべて解体し、駆体補修・耐震補強により現行法規のレベルまで耐震性能を向上させるとともに、デザイン性の向上や最新設備の導入を行い、新築同等に再生するというもの。単なるリノベーションとは異なり、建物の長寿命化を実現することができる。

三井不動産では、青木茂建築工房とタッグを組み、「リファイニング建築」とともに長期的視野による賃貸マンション経営に最適なプランを企画しサブリースも含めてトータルでサポートする「老朽化不動産再生コンサルティングサービス」を展開している。

今回竣工した「インスタイルレジデンス本駒込」は、まず駆体を再利用するにあたって現状のコンクリート駆体の耐久性を調査、建物内外部の柱、梁、壁、スラブの不良箇所を綿密に分析した結果、建物の長辺側の耐震が不足していることが判明、既存開口部に耐震壁(コンクリートの壁を挿入)を設置し、さらに柱と耐震壁の間にスリットを設けることで揺れにも強い構造とした。また梁が破損する可能性がある箇所には炭素繊維シートで補強した。

こうした「リファイニング建築」を施した上で、三井不動産では周辺の賃貸マーケットニーズに合わせて、従来はワンフロア6戸全32戸だった物件をワンフロア7戸全39戸のプランを企画、収益性を向上させた。

さて、プレス向け見学会では、「インスタイルレジデンス本駒込」内のモデルルームが公開された。共用部分のため既存物が使用されている窓以外は、新築同然の美しい仕上がりになっており、古い物件にありがちな梁部分もうまくレイアウトに取り入れられてのも確認できる。

見学会の時点で、すでに入居率は95%以上、賃料も周囲の新築マンションと比較して90%以上と遜色なく非常に価値のある「リファイニング建築」となった。
また既存の建物を再生させるという取り組みは、昨今のサステナブル社会の実現という観点からも意義のあることといえる。

今後、東京都内はこうした耐震補強をともなうマンションのリノベーション工事は増加していくはずである。内装事業者としてもビジネスチャンスは眠っている。東装協環境研究会では、こうしたビジネスの可能性を研究していくとしている。

東京室内装飾(第695号)より引用